がぜさま、硬貨を「茶色いおはじき」「銀のおはじき」「穴のあいたおはじき」って認識してないか。
名義のとこに「HARUYA NAGUMO」と印字されてる硬めのカードを手元に用意して、自分の誕生日の数字を順に入力するとお買いもの出来るって認識してないか。
こわいな、こわいな。
例えばの話、晴矢が出かけてる間について。
ガゼル様ひとりでお留守番中にコンビニとかお買いものに行ったりするのか気になったけど、そもそも外へ出る身支度を自力で出来なさそうなのでセーフ。
必要なものはクララが届けてくれるので。
「え、なに、独り言かよ」って晴矢が訊いたら。
「ちがうよ。歌ってるんだよ」だって。こわ。
何故、ガゼル様は自らを「わたし」というのか。
なにげなく話の流れで晴矢がツッこんで訊いてみたところで、一言だけ「そう教わったから」と。
瞬間、背筋ゾゾゾ~なロマンティックホラー。
いつ、どこで、だれから。そんなの訊くまでもないくせに。
園の、同年代が「ぼく」から「おれ」に変わる頃でも。ずっと「わたし」は「わたし」でいて。
「わたしはガゼル」の魔法は深々と降り積もる。
晴矢は取り憑かれてしまったとしか言いようがない。
晴矢がその存在を信じ続ける限り、それは揺るぎなく、確かにそこに在り続ける。
さすがのなぐはるも「こいつになら齧られてもいいかな」って気になってしまうのがわかる。とてもわかる、この口許の造形。
歯磨き粉だって、甘ぁくないとね。